民泊新法の骨子は民泊を推進しつつ、ジェントリフィケーション対策をきちんとすることです。以下のポイントはこのジェントリフィケーション対策の観点及び健全な民泊市場の発展に寄与すると評価できると思います。
民泊のメリットとして謳われることの多い「空き家対策」という言葉はまやかしです。空き家対策とは人口減少下における日本において、建築・不動産業界がいたずらな新築着工を止めることが、空き家を発生させないための根本的対策です(※)。発生してしまった空き家をうんぬんというのは二次的な対策に過ぎません。そういう意味では、ガイドライン1-1(1)②で民泊専用新築投資用マンションの建築に釘をさしたことは評価できると思います。また地域の宿泊事業者にとっても朗報といえるでしょう。
(※)地価が上がっているのに賃貸物件の空き家率が増えているという異常な状態が続いています。これは、割安な投資物件として海外投資家から目をつけられているのと、相続税対策として賃貸物件を建てたほうが地主にとってお得になる状況が背景にあり、故にマンション・アパートの新築着工が止まらない構造になっています。
ガイドライン2-1(2)①及び2-2(1)②において、民泊での旅行者に供する居室については簡易宿泊業のルールを準用するとしたのは良いことでしょう。民家なので、本当に「カウチサーフィン」で良いだろうとソファで寝てくれ、とか部屋がやたら狭い、シーツが汚い、とかですと宿泊者側の需要がなくなってしまいます。供給がいくらあっても需要がなければ、民泊新法を何のため定めたの?という話になってしまいますからね。また2-2(4)において、本人確認方法も同様に準用し、外国人の場合は名簿の記載に合わせパスポートのコピーの保存も義務付けたこともテロリストなどの危険外国人の潜伏先になることを防ぐのに良い方法といえるでしょう。
ガイドライン1-1(3)①において、民泊の届出の際、手書きの図面でOKとしたのは良いことでしょう。賃貸物件で民泊を行う場合に、建築図面まで求められると届出を出せない者が多く、民泊供給側のボトルネックになることが予想されるからです。一方で民泊で問題になるのは騒音やゴミ出しですが、マンションなどの共同住宅の管理組合で認められていないのに勝手に届出を出されては他の住民にとってはいい迷惑ですよね。届出時に「その住宅に民泊を禁止する意思がないことを証する書類」の添付を義務付けたのはファインプレーですね。
住宅宿泊管理業者というのは、家主不在型民泊において掃除や鍵の受け渡しの代行を行う業者のことです。2018年6月の新法施行前において民泊は基本的に違法にもかかわらず跋扈している背景には、これらの代行業者の犯罪ほう助が存在します。いくら経験があってもこういった遵法意識の低い不逞の業者が今後も営業を行っていくことには危険性があります。そこでガイドライン3-1(3)①で一定のハードルとして宅建業やマンション管理業、賃貸不動産経営管理士などの資格をもつ事業者(または個人)に住宅宿泊管理業者を絞ることは効果があると思料します。言い換えますとこれらの資格またはこれに代わる2年以上の住宅管理実務経験がない場合は、住宅宿泊管理業者にはなれないわけです。
住宅宿泊仲介業者とは、airbnbに代表される民泊物件と旅行者をつなぐ仲介サイトの運営業者を指します。現在もほとんどの民泊は違法にもかかわらず、掲載に応じている運営業者には何の罰則もない状態です(あくまで掲載した違法民泊オーナーが悪い、という立てつけ)。しかしガイドライン4-5③において、合法民泊の届出番号を得ていない物件を掲載することは禁止行為となったことで、これらの違法民泊が一掃されることになるでしょう(※)。
(※)実際に2018年6月の法施行前にAirbnbが無許可物件の掲載を一斉に停止しました。ただ予約が入っていた無許可物件を予約キャンセルのうえ削除したため、旅行者の方が一番割を食うかたちになりましたが・・・