第五講:DMCとゲストハウス


政府主導の新たなDMC

 日本の観光庁はあまり予算のない省庁と第三講で述べましたが、実際に日本版DMOの登録は行いつづけるものの強力なカネの支援は観光庁ではできない、というのが現状です。

 さらに第一講で述べた通り、日本版DMOの多くが観光協会や観光案内所からの転身であることから、マーケティング活動で重要な「選択と集中」ができないのではないか、という懸念が持たれています。これは限られた資本を有効活用するために特定の資源を選択して集中的に投資し売り出すのが良し、とされているマーケティングのコンセプトです。しかし、今まで平等に公平に域内の業者と向き合ってきた観光協会や観光案内所上がりのDMOでは、そのしがらみを断てず予算があってもマーケティング活動ができないのではないか、という懸念を指しています。

 

 そこで、カネの支援と組織のありかたの両方を変えようとする動きがでてきています。それが内閣府主導のDMCの組成です。内閣府には地方創生交付金という比較的な潤沢な予算があります。これを交付するにあたって、私企業との合弁によるDMC、すなわち民営の会社を設立することを条件とします。

 これによりしがらみを断ち切り、マーケティング活動に従事する専門家を私企業から供出してもらい、「選択と集中」を行うことで交付金を出す5年以内にファイナンス的に自走できる組織に仕上げていくというコンセプトです。自治体からの助成金に頼るのではなく稼いだカネで組織を廻すという一般的な企業活動にシフトしようとする動きです。

 2018年末の本稿執筆時点において既に地方創生関連事業で実績のある私企業が大小様々な自治体と各地で合弁でDMCの組成を始めています。

 これは、第二講で述べたDMOの目標を決める三要素のうち②人材の育成・活用の部分について、第三講で述べた日本の構造的な問題(パブリックセクターの人材開放性の低さ)を補完することができるので、マーケケティング組織としてのDMOに近づく施策として効果を発揮するものと思料します。

 ただし、三要素の①理念の共有と③資金の調達に関しては、まだまだ未知数です。第四講の三層構造でいうと稼ぐためには少なくとも二層目に位置しなければいけませんが「選択と集中」を謳った状態で①理念の共有のために合意形成プラットフォーム機能を果たさなければニーズに則ったスムーズな商品化ができなくなります。予算や規模的に狭域DMOになりそうな中でどうやって収益化していくのかが腕の見せ所となりそうですね。


ゲストハウスのDMCとしての可能性

 上述のように内閣府のDMCの組成候補となる法人は既に内々に決まっているため、皆様のゲストハウスが手を挙げることは現時点ではかないません。ただ広義の意味ではゲストハウスはDMCになれる可能性を大いに秘めていると推量しています。その理由は以下の3点です。

  • 宿泊機能があるため目的地そのものになれること
  • 古民家の改装でヒトの集う場所になった事例が各地で散見されること
  • 地域のマーケティング活動はできなくてもブランディング活動はできること

 どんな魅力的な目的地であろうと受け入れ体制が整っていなければ滞在時間を伸ばせず、消費の発生は抑制されてしまいます。ゲストハウスをはじめとする宿泊施設はその滞在を後押しする機能を自ずと有しているので、旅行者からみれば地域の中心となりやすい存在です。

 

 特に古民家の改装はそこがゲストハウスでろうとコワーキングスペースであろうと内外からヒトを惹きつける磁力になりやすい傾向が見られます。規制の厳しい旅館業よりも簡易宿泊所のほうがフィットすることから、古民家はこれからもゲストハウスのトレンドになりそうです。

 

 そしてこういったゲストハウス自体が旅の目的地となると自ずと周辺の風景と相まってそのエリアを特徴づけるアイコンになります。これは他所との差別化が旅客の頭の中にできていることを意味しますので、地域ブランディングに貢献できている状態とも言えます。

 

 以上三点より、「○○ゲストハウスに泊まりにXXXという地域にいきなよ、オーナーが魅力的なスポットを紹介してくれるから」といった口コミが広まれば、それは立派なDMCです。XXX地域に行くなら○○ゲストハウスに泊まれ、ではなく○○ゲストハウスに泊まるためにXXXという地域にいく。こうなった時、そのゲストハウスは地域内における旅行客との最大の接点ですから、DMC以外の何物でもないのです。自らを宿泊業者と位置付けず、マーケティング活動はできずともそれ以外の機能の付帯を目指すDMCと位置付けることが、ゲストハウスにとっても最大のブランディングとなるわけです。観光圏限定旅行業者を目指すなど、戦略の練りどころといえそうです。